テレビでおなじみの黒柳徹子。30周年を迎えた「徹子の部屋」での多彩なゲストとの絶妙なトーク、「世界・ふしぎ発見!」での名回答者ぶり、もはや伝説となっている「ザ・ベストテン!」での久米宏との掛け合いなど、“テレビの申し子”と言っても過言ではない才能はご周知のとおりです。また、ユニセフ親善大使として世界各国を訪問したり、大ベストセラー「窓際のトットちゃん」をはじめとして数々の著作を発表するなど、八面六臂の活躍ぶりから、“超人的なマルチタレント”というイメージを抱いている人も多いでしょう。
 しかし、黒柳徹子が実は偉大な舞台女優であることは、意外に知られていないのではないでしょうか。デビューは「NHK専属テレビ女優第一号」でしたが、その後、文学座研究所、ニューヨークのメリー・ターサイ演劇スタジオで演技を学び、多くの舞台に出演しています。 現在では、新劇の劇団・青年劇場と劇団NLTに隔年ごとに客演、「喜劇キュリー夫人」「幸せの背くらべ」といった自身のレパートリーである作品を、実に3ヶ月にわたって全国の演劇鑑賞会で巡演する旅を、毎年行っているのです。
また、これとは別に、舞台女優としてライフワークとなっているのが、この「海外コメディシリーズ」です。89年銀座セゾン劇場の「レティスとラベッジ」(ピーター・シェーファー作)から始まり、セゾン劇場閉館までの10年間に11演目・13作品に、00年からは、パルコ・プロデュース公演として5作品に出演しています。このシリーズの基本コンセプトは、良質な海外コメディの上演。毎回、上演作品も熟考に熟考を重ねて選んでいます。黒柳徹子は稽古開始前から作品の背景や自分の役について入念な下調べをし、そして約2か月間の稽古で役に成りきっていくのです。そうして出来上がった作品を観たお客様からは、「まるで徹子さんのために書き下ろされた作品のよう」とよく言われるそうですが、それは並々ならぬ努力の成果なのです。96年には、「幸せの背くらべ」と「マスター・クラス」で毎日芸術賞と読売演劇大賞の大賞および最優秀女優賞と受賞しました。舞台女優として、最高峰と言える快挙です。

そして、今年、この黒柳徹子主演海外コメディシリーズは19回目を迎えます。森光子さんの「放浪記」公演回数が1700回を越え話題となっていますが、16年間、ほぼ毎年新作に出演し、新たな笑いと感動を提供し続けているという意味で、この黒柳徹子のシリーズも、輝かしい記録と言えるではないでしょうか。黒柳徹子自身、「自分は(和物の足袋や草履ではなく)靴を履いて最も多く長く舞台に上がった女優を目指す」と言っています。

今年の作品「ふたりのカレンダー」は、かつて「ターリン行きの船」と題して杉村春子さんが、「古風なコメディ」というタイトルで越路吹雪さんが演じた名作で、世界的にヒットした大人のラブ・コメディです。
黒柳徹子演じるヒロインは、サナトリウムで療養中のリージャ。彼女は、今はサーカスのチケット売りだが、その前はサーカス団のスターで、その前は女優だった、と語ります。彼女の発想や行動は奇抜で常識破り。騒ぎを引き起こす彼女の前には、団 時朗扮するサナトリウムの医長ロディオンが立ちはだかります。ロディオンはどうにか彼女に大人しくなってもらおうとするのですが、無駄な努力、ふたりはまるで水と油のようです。ところが日を重ね、お互いの過去が明らかになってくるにつれ、リージャとロディオン、ふたりの心は静かに、そしてドラマティックに変化を遂げていきます。

人生を経た大人にこそわかる、生きることの悲哀と愛することの素晴らしさ。世界が涙し、笑い、心を熱くした名作「ふたりのカレンダー」。黒柳徹子の魅力が全開する舞台にどうぞご期待下さい。
 

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