その日、パルコ劇場観客席の平均年齢はいつになく高かった。私が知る中で、最高じゃないかと思うほど。
そして、ノリのよさも相当だった。それもこれも、稀代のエンターテイナー・国本武春の魅力のなせるわざである。
 袴姿で登場した武春の「待ってました!」「名調子!」といった掛け声教室で始まった第一部は、古典浪曲。浪曲に関する簡単なレクチャーに続いて、染物屋の奉公人が花魁に恋をする古典浪曲『紺屋高尾』を口演。調子の良さもさることながら、その顔と声の表情の豊かさにすっかり引き込まれた。
 第二部は三味線を使った弾き語り。洋服に着替えた武春は、オリジナル曲を挟んで、三味線でブルースやロックから沖縄や中国の音楽、スペインのフラメンコギターまで、弾いて魅せた。歌も上手いが、ピックやバチを使い分けて繰り出す超人的な技とセンスは溜め息モノだ。お次は、古典浪曲『忠臣蔵』を使って実技講座。殿中で吉良に斬り付ける浅野、それを後ろから羽交い絞めにする家臣の身ぶりとセリフを、のせ上手な武春講師がやって見せる。
気がつけば、前も後ろも両隣の観客も、みんな笑顔で羽交い絞めの格好。こんな光景、滅多に拝めまい(笑)。
 締めは、忠臣蔵を弾き語る『ザ・忠臣蔵』より、切腹に向かう浅野と家臣の別れを描いた『殿中刃傷〜田村邸の別れ』を、前半はロック、後半はバラードのアレンジで。これが本当に泣けた。切々としたバラードのメロディがセリフとあいまって胸に響き、さっきまでの大笑いが嘘のように、あちこちからすすり泣きが漏れる。
 しかし、最後はアンコール曲『ええじゃないか』で、また笑顔。タイトル通り“どかーん!”と降ってきた紙吹雪の中、老いも若きも、男も女も立ち上がっての大団円となった。久々に顔と腹の筋肉が痛くなるほど笑い、元気をもらった2時間弱。「これぞ、まさしくエンターテインメント!」としみじみ感じた公演だった。
ライター:岡崎 香
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