演出家・宮田慶子によるストーリー解説

◆ ピアノ♪レッスン
うらぶれた電車の高架下の商店街、いろんな小さなお店が並んでいる中にあるしけたピアノ教室が舞台になっています。そこでピアノを教えている男と、いきなり飛び込んでくるホステスの女。
ホステスの女は、なんとしてでも弾きたい曲がある。なんとしても教えてくれ、といって飛び込んでくる。ピアノ教室の男性教師はピアノを断念しようかと思うほどに追い詰められた状況の中にいた。
そこで出会った二人が駆け引きをしながら、ピアノレッスンにはいっていくというお話です。
それぞれが切羽詰った状況をかかえながらも、お互いのプライドは捨てられないままに繰り広げられるやりとりがとても魅力的な作品です。

◆ しゃぼん
郊外にある、昭和のにおいのする床屋さん。アメンボウがぐるぐる回っていたり、いわゆる床屋さんの椅子があったり、タイル張りの流しがあったりするような、昔なつかしい床屋さんが舞台です。
そこの床屋さんの椅子に妙齢の女性が座っている。彼女と床屋の主人とのやりとりから、二人は年は離れているがすごく親しい幼馴染であることがわかります。
でもだんだん成長していって、男も結婚をし、女も美しい女性になった。
それでも彼女は心の奥底にその男に対する甘えたい、頼りたい思いがあり、男も彼女が気になっている。甘酸っぱい、そしてレトロな雰囲気とぴったりマッチした柔らかな心のやり取りが描かれた作品です。

◆ エアコンな夜
ちょっとエッチな漫画を描いている漫画家の女性。締め切りに追われて徹夜でようやく書き上げた翌朝、頼んでいたエアコンの修理屋さんがやってきた。ボロボロの状態で修理屋さんを招き入れてみると、彼はかつての自分の親友の彼氏だった。
こんなところで再会してしまって、お互いまったく知らないわけでもないしとあわてるが、その後、十年近くも会っていなかったお互いの時間の長さがだんだん明かされていき、最後には、心を打ち明けていく。
もしこんな出会いがあったら、大変な仕事に追われている生活も悪いものではない、と思わせてくれる。そんな、ちょっと元気の出る作品です。