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『ラヴ・レターズ』 14回目の夏に
青井陽治 AOI Yoji 
『ラヴ・レターズ』が、いよいよ8月24日に、300回目の公演を迎えます。
 ミュージカル大作の大きな公演が相つぐ今、1000回、2000回の舞台を重ねる作品も珍しくありませんが、杉村春子さんの『欲望という名の電車』が500回、松本幸四郎さんの『ラ・マンチャの男』が1000回を越えるのに、30年という月日を要したことを思うと、ちょっと厳粛な気持ちになります。
 14年目の300回。
 それも、『ラヴ・レターズ』の場合、一組ごとに稽古1回、本番1回という原則ですから、大げさに言えば、配役を変えながら、「300回の再演」をしたということでもあります。一期一会の2時間という小石を、300回も積み上げたと言ってもよいでしょうか。
 まさにその一期一会、再演を望まれながら、決して二度目を迎えようとしない、素晴らしいカップルもあります。もう一度聞きたいと思ったら、天国で特別公演をするしかないカップルもできました。一方に、10回、20回と再演を重ね、自分たちの歩みを測る里程標のように『ラヴ・レターズ』と出逢い続け、無期限不定期ロングランの推進力となって下さっているカップルもあります。
 どのカップルも、通常の「演じる」感覚と異なる、「自分自身の人生を注ぎ込むようにして、自らの感動そのものを演じる」という『ラヴ・レターズ』の怖ろしさと、言葉に尽くせない楽しさを、存分に体験して下さっています。
 観る側にとっても、アンディーとメリッサの物語に対する感動と共に、虚構を演じるのが仕事の俳優が、ぎりぎりの線上で「一人の人間としての真実」をにじませる、その瞬間に立会えることが、『ラヴ・レターズ』の深い魅力になっているのだと思います。
 この仕事を通じて、僕自身も、多くの大切なことを学び続けています。
 理解のしかたも、その表現も、無限だということ。
 魂と魂が出逢う、清らかで広大無辺な場所として、劇場はあるのだということ。
 その仲立ちをする自分たちの仕事の深さ、重さ。
 『ラヴ・レターズ』が開いてくれた心の眼を、すべてに生かしたいと思います。
 まだ、舞台に立つのが怖い若い俳優さんや、長期の公演は……と仰言るヴェテランの方々にも、『ラヴ・レターズ』なら、その演技の魅力を、思いのままに発揮して頂ける。そういう役割も、この舞台にはあるような気がします。
PARCO劇場がある限り、『ラヴ・レターズ』と共に生きて行く。そんな幸せを、多くの方と共有し続けたいと、願っています。



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