この作品の登場人物はメアリー・ステュアートとその乳母、そしてエリザベスとその侍女の4人。しかし、演じるのは2人の女優。メアリーを演じる女優はエリザベスの侍女を、そしてエリザベスを演じる女優はメアリーの乳母を演じます。それはまるで二人の言葉が合わせ鏡のように無限にこだまし、その姿を映し出す万華鏡のように互いの心に響くと同時に、その哀しみや怒り、女として生まれたがための苦しみや喜びが客席に伝わることでしょう。
 この大役に挑むのは原田美枝子と南果歩。二人の女優がすべての感情を持ち込み、「生きた言葉」のバトルを繰り広げます。そして、今を生きる私たちに、その美しく逞しい二人の姿は、私たちに秘められている熱い「何か」を沸き立たせることでしょう。 国を背負い、それをまっとうしようと女を捨てたエリザベス(原田美枝子)、奔放ゆえに幽閉され、処刑されたメアリー・ステュアート(南果歩)、互いの人生の選択は真逆であったにもかかわらず、この二人の人生から聞こえてくる言葉たちは、光と影、太陽と月のように互いに依存し、女であるがゆえの言葉として深く響いてくるでしょう。






 演出は2004年12月、オン・ブロードウェイでスティーブン・ソンドハイムの「太平洋序曲」の演出で、東洋人初の演出家デビューを飾った、今最も注目される宮本亜門。1990年に本作品の日本初演を演出した彼が、あらたな第一歩として創作します。そしてクリエイティブ・スタッフには今ファッション業界で熱い注目を集めているファッションデザイナー、DRESSCAMPの岩谷俊和が宮本亜門のラヴ・コールに応え、初の舞台衣裳を手がけます。宮本×岩谷の初コラボレーションも是非ご期待ください。美術には、ニューヨーク、ロス・アンジェルスの拠点を中心に活躍する新進気鋭のレイチェル・ホーク、彼女が作り出す舞台空間に岩谷の衣裳、その素材すべてをクリエイトし、二人の女優とともに息吹を与える宮本亜門。
 21世紀を生きる女性たちへ、そして男性たちへ、現代社会を生きるすべての人々に、エネルギッシュに、そして大胆に、このメアリー・ステュアートとエリザベス1世という永遠に語り継がれ、そして生き続ける二人の女王の生き様を通して、女性の、そして人間の深淵に鋭くメスを入れます。宮本亜門が挑む新しい「メアリー・ステュアート」、ご期待ください。