タンゴ・冬の終わりに

あの傑作を約30年ぶりにパルコ劇場で上演!

PARCO PRODUCE

INTRODUCTION

パルコ劇場初演の名作「タンゴ・冬の終わりに」を約30年ぶりに上演!

突然引退して実家の古い映画館に引きこもってしまった俳優・盛。彼を追ってきた妻ぎん。そこへある日、新進女優の水尾が姿を現し、彼女を追って、夫の連もやってくる。壊れゆく盛と、彼をとりまく人間模様が渦を巻き・・・

『タンゴ・冬の終わりに』は、1984年清水邦夫がパルコ劇場に書下ろし、蜷川幸雄演出により、上演された傑作です。好評を受けて86年に同じキャストで再演された後、91年には、アラン・リックマン主演でロンドン・ウェストエンドでも2ヶ月間上演され、話題を呼びました。また2006年にはシアターコクーンでもやはり蜷川幸雄の演出で上演されています。

この清水邦夫、渾身の名作を、行定勲が、新たに演出します。『趣味の部屋』など、パルコ・プロデュース公演4作品ほかを演出し、いずれも高い評価を得、多くの観客を集めた行定勲が、映画人の思いも込めて、この骨太な作品に挑みます。

主演には、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』以来10年ぶりのパルコ劇場出演となる三上博史。突然引退を宣言し、生家の古びた映画館に隠棲、徐々に精神を壊していく俳優・清村盛は、まさに三上博史のはまり役と言えるでしょう。そしてその盛を追いかけてくる新進女優には倉科カナ。みなぎる情熱を秘めた清新な女優・水尾役に挑みます。また盛の妻でやはり女優のぎんには、パルコ劇場6月公演『メアリー・ステュアート』でエリザベス一世を演じる神野三鈴。ユースケ・サンタマリアが演じる、さえない俳優の連は、水尾の夫で、彼女を愛するあまり、思いがけない行動に出ます。さらに、岡田義徳、梅沢昌代など、実力ある華やかな俳優陣の共演でおおくりします。
 約30年ぶりにパルコ劇場に帰ってくる『タンゴ・冬の終わりに』。どうぞご期待下さい!

STORY

清村盛(三上博史)は有名な舞台俳優だったが、三年前、突然引退を宣言し、妻ぎん(神野三鈴)と共に、故郷に引きこもっている。捨てたはずの華やかな俳優人生を忘れられない盛の精神状態は日々悪化し、今は、少年時代に盗んだ孔雀のはく製の幻影に取りつかれている。

隠棲先の生家は、日本海に面した町にある、古びた映画館で、かつての賑わいが嘘のように、寂れ、取り壊されてスーパーになることが決まっていた。

そこにある日、若く美しい女優、名和水尾(倉科カナ)とその夫、連(ユースケ・サンタマリア)が訪ねてくる。盛と一時期、恋愛関係だったらしい水尾は、まだ盛が忘れられず苦しんでいるが、盛は水尾を全く思い出せない素振りだ。実のところ、水尾を呼び寄せたのは、ぎんで、彼女と再会させて、盛をかつてのように甦らせようと目論んだのだった。

現実と幻影の区別がつかない盛との会話。しかし、水尾は、盛が確かに自分を愛していたことを悟る。そして二人は狂おしくタンゴを踊るのだった……

HISTORY

1984年の上映ヒストリーを見る
1986年の上映ヒストリーを見る
1984年 タンゴ・冬の終わりにポスター

[上演DATA]1984年4月3日(火)〜1984年4月30日(月) PARCO西武劇場[作]清水邦夫[演出]蜷川幸雄[出演]平幹二朗、名取裕子、坂口芳貞、塩島昭彦、大門伍朗、石丸謙二郎、吉原朝馬、阿川藤太、伊藤珠美、野中マリ子、蜷川幸雄、松本典子 他[美術]朝倉摂[照明]吉井澄雄[振付]村田大[音響]高橋巌[衣裳]合田瀧秀[舞台監督]高田憲治[企画制作]パルコ

1984年 上映イメージ 1

撮影:山田眞三

1984年 上映イメージ 2

撮影:山田眞三

1986年 タンゴ・冬の終わりにポスター

[上演DATA]1986年2月1日(土) ~1986年2月25日(火) PARCO劇場[作]清水邦夫[演出]蜷川幸雄[出演]平幹二朗、松本典子、名取裕子、緋多景子、坂口芳貞、塩島昭彦、大門伍朗、渕野直幸、不破万作、蜷川幸雄 他[演出]蜷川幸雄[美術]朝倉摂[照明]吉井澄雄[振付]村田大[音響]高橋巖[舞台監督]高田憲治[協力]株式会社仕事[企画制作]パルコ

COMMENT

作品周辺のこと

清水邦夫 「タンゴ・冬の終わりに」初演パンフレットより

 ぼくが生れ育った町には、映画館が二軒あった。そのうちA映画館の方に入り浸った。経営者が興行師で、警察官だった父となぜか親しく、わが家は一家全員でよく映画を見にいったものだ。
 A映画館は、実演などもよくやる劇場スタイルで両サイドが桟敷になっており、座ぶとんにひっくり返って映画を見ることができた。
 冬になると桟敷には火鉢、椅子席にはダルマストーブがおかれた。この興行師にはぼくと同年配の息子がおり、彼がよくテケツ(受付)でモギリをやっていた。祭りの季節になると、興行師一家はあちこちを点々として、珍獣海坊主の見世物興行をした。バカバカしいから見ちゃだめといわれたが、ある時木戸銭を払ってこっそりのぞくと、時々大きな水がめからプワッと顔を出す海坊主の子どもが、その興行師の息子だったのに仰天した。彼とは、映画館の無人の客席でよくチャンバラをして遊んだのを覚えている……。

 「流芸の里・月潟村」という題名のルポとも小説ともつかない作品にとりかかって数年になる。月潟村は新潟県蒲原地方にあり、かつて村民の七割が角兵衞獅子、瞽女、祭文語りなどの流芸人だったといわれている。またその近くの海べりに角海浜という寒村があり、これが”毒消しゃいらんかねぇ”の毒消しなどの行商で知られている。
 今度の戯曲は、この取材からヒントをえて書き出したものだが、例によってどんどん変わっていき、舞台設定も小学校の分教場から映画館に一変した。絢爛と登場するはずだった流芸人や行商人は遠くに追いやられた感じになってしまったが、ぼくとしては、映画館のあのなつかしい闇が、彼等の叫び、彼等の歌、彼等の夢をなんとか内包してくれるのではないかと願っている。
 映画館といえばもうひとつ。ぼく自身、早大入学で東京へ出てきたわけだが、はじめ地理もわからず友達もおらず、型通り地方出の悲哀をたっぷり味わった。そんな折、早稲田署の署長をしていた叔父が退職して小さな映画館を経営しているときき、そこへ押しかけた。高田馬場の銀星館。 銀星などというイメージからほど遠いうす汚れた建物だった。警察署長がどうして映画館主になったのかよくわからないが、とにかく無料パスをもらい毎日のように通った。一日目、二日目でその銀星館の闇とふるさとのA映画館の闇とがすっとつながり、溶け合い、ぼくは東京へ出てきてはじめて、呼吸がラクになったような感触をもった……。

 この作品では、三島由紀夫の「孔雀」をはじめ、サルトルの「キーン」、シェイクスピアの「オセロー」など、いつもの如くいろいろ引用させてもらっているが、主人公清村盛が青春時代にやったという芝居の選択にはハタと困った。いや、はじめはそれにピッタリの戯曲がすぐに見つかるだろうと楽観していたのだが、実際に書き出す段になっても決まらない。どうしてもしっくりくる戯曲がないのだ。
 結局、自分でその作品を創り、それを引用することにした。引用としてははじめての経験である。それになんとなく戯曲を二つ書いたような気分になっている……。

CAST&STAFF

CAST

清村 盛[引退した舞台俳優]= 三上博史 その妻 ぎん[女優]= 神野三鈴 名和水尾[新進女優]= 倉科カナ 名和 連[その夫・俳優]= ユースケ・サンタマリア 清村重夫[盛の弟]= 岡田義徳 清村はな[盛たちの叔母]= 梅沢昌代 宮越信子[受付兼雑役婦]= 河井青葉 上斐太[叔父・巡査]= 有福正志 北斐太[叔父]= 有川マコト 西斐太[いとこ]= 小椋毅 タマミ[高校一年生]= 青山美郷 トウタ[高校一年生]= 三浦翔哉

STAFF

作:清水邦夫 演出:行定勲 美術:伊藤雅子 照明:佐藤啓 音楽:内橋和久 音響:井上正弘 衣装デザイン:伊藤佐智子 ヘアメイクデザイン:勇見勝彦 振付:佐々木信彦 演出助手:長町多寿子 舞台監督:松下清永 
 宣伝美術:信藤三雄 宣伝:吉田プロモーション 制作:冨士田卓 プロデューサー:田中希世子 製作:井上肇 企画・製作:(株)パルコ

CAST PROFILE

みかみ ひろしさんの画像

三上 博史 (みかみ・ひろし)

東京都出身。1979年、フランスで公開された寺山修司監督の映画『草迷宮』で主演デビュー。81年『太陽のきずあと』、83年『戦場のメリークリスマス』、84年『瀬戸内少年野球団』『さらば箱舟』等で映画俳優のキャリアを重ねる。84年のTVドラマ『無邪気な関係』への出演を契機に活躍の場をテレビに移し、90年代前半までのトレンディドラマで爆発的人気を得る。近年は音楽活動でもその才能を発揮している。
主な映画に、『私をスキーに連れてって』(87年)、『遠き落日』(92年)、『スワロウテイル』(96年)、『宮澤賢治―その愛―』(96年)、『月の砂漠』(03年)『予言』(04年)など。最近のテレビドラマに、『平清盛』(12年)、『実験刑事トトリ』(12・13年)、『震える牛』(13年)、『明日、ママがいない』(14年)、『贖罪の奏鳴曲』(15年)。舞台は『楽屋』(84年)、『青ひげ公の城』(03年)、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(04・05年)、『あわれ彼女は娼婦』(06年)、『三文オペラ』(09年)、新版『天守物語』(14年)などがある。

くらしな かなさんの画像

倉科カナ (くらしな・かな)

1987年生まれ。熊本県出身。「SMAティーンズオーディション2005」でグランプリに選ばれデビュー。2009年、NHK連続テレビ小説「ウェルかめ」に主演し人気を博す。以降女優として数々の作品でヒロインを演じている。
最近の主な映画に、『みなさんさようなら』(13年)、『遠くでずっとそばにいる』(13年)、『キッズ・リターン 再会の時』(13年)、『ジ、エクストリーム、スキヤキ』(13年)。
テレビドラマに、CX『名前をなくした女神』(11年)、TBS『もう一度君に、プロポーズ』(12年)、 CX『dinner』(13年)NTV『奇跡の教室』(14年)、NHK『ダークスーツ』(14年)、WOWOW『天使のナイフ』(15年)、CX『残念な夫』 (15年)。舞台は『カレーライフ』(11年)、『シダの群れ 純情巡礼篇』(12年)、『真田十勇士』(13・14年)他がある。

かんの みすずさんの画像

神野三鈴 (かんの・みすず)

1966年生まれ。神奈川県出身。独特の存在感と演技によって舞台のみならず、近年は映像作品にも活動の場を拡げる。 2012年にはパルコ・プロデュース『三谷版 桜の園』(12年)のワーリャ役及び、こまつ座&ホリプロ公演『組曲虐殺』(12-13年)の伊藤ふじ子役の演技により、第47回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
近年の主な出演作品に《舞台》『太鼓たたいて笛ふいて』(14年)、『カッコーの巣の上で』(14年)、『三人姉妹』(15年)、『メアリー・ステュアート』(15年)。 《TVドラマ》『Woman』(13年/NTV)、『三谷幸喜の大空港2013』(13年/WOWOW)、『おやじの背中』(14/TBS)、『隣のレジの梅木さん』(14年/CX)、『アイアングランマ』(15年/NHK-BS)。《映画》『駆込み女と駆出し男』、『日本のいちばん長い日』(15年8月公開)などがある。

ユースケ・サンタマリアさんの画像

ユースケ・サンタマリア(ゆーすけ・さんたまりあ)

1971年生まれ。大分県出身。94年ラテンロックバンド「BINGO BONGO」のヴォーカル&司会としてデビュー。97年、フジテレビドラマ「踊る大捜査線」の真下正義役でブレイク。以降、映画・ドラマ・バラエティ・CM・舞台と様々な分野で活躍。05年『交渉人 真下正義』で第29回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。08年には『R246 STORY-弁当夫婦-』で初監督。主な映画出演作品に、『踊る大捜査線 THE MOVIE』シリーズ(98年、03年、10年、12年)、『UDON』(06年)、『キサラギ』(07年)、『少年メリケンサック』(09年)、『鈍獣』(09年)、『日輪の遺産』(11年)、『はじまりのみち』(13年)、『薔薇色のブー子』(14年)『エイプリールフールズ』(15年)など。主な舞台に、『ドント・トラスト・オーバー30』(03年)、『姫が愛したダニ小僧』(05年)、『恐れを知らぬ川上音二郎一座』(07年)、『東京月光魔曲』(09年)、『その族の名は「家族」』(11年) 、『小野寺の弟・小野寺の姉』(13年)、『モンティ・パイソンのSPAMALOT』(12・15年)。