当初エブリン・M・アッシュフォード教授役で出演予定でした新村礼子は、体調不良により降板となりました。
代わって本山可久子が出演致します。あしからずご了承くださいませ。                  

一人の孤独な女性が死を目前にした時に、
生きてきた証を立てるためにたどる人生の旅路。
彼女が巡りついたのは、自分の中から湧いてくる自分自身への讃歌だった・・・

癌を告知された厳格な英文学者ビビアンが最期の時に知る、
生き抜くことの重さ、本当の勇気、真実の愛。
そして、彼女が最後まで失わなかったもの・・・それは心を癒す究極のウィット。

全米が涙したピュリッツァー賞受賞戯曲を、いよいよ日本初演 !!

ウィット

「生涯忘れられない、輝かしく人間味あふれる芝居」
(ニューヨーク・マガジン)
「比類なき体験・・・聡明で、思慮深く、ウィットに富んでいて、心を締めつける。」
(ニューヨーク・タイムズ)
「勇気づけられ、悲しみに触れる90分の思いがけない体験。」
(ニュースデー)
など、ブロードウェイ各紙絶賛!!


公演概要

「ウィット」は、現在は小学校教師をしているマーガレット・エドソンが1991年に書いた戯曲です。
 主人公は、厳格な英文学者ビビアン。末期の卵巣癌であることを宣告された彼女は、持ち前のタフさで過酷な実験的化学療法に立ち向かいます。しかし、病魔の進行と薬の副作用に苦しみ、どんな知的探求心も学術的栄誉も、死を目前にした彼女には何の役にも立たないことに気がつきます。そして、自分の人生に何が欠けていたのかも・・・。
 末期癌という重い題材をテーマとしながら、この作品は主人公の鋭い機知(=ウィット)のある台詞で時に可笑しく、時に辛辣に観る者の胸に迫ってきます。弱気になっていく自分を叱咤し、勇敢に病に立ち向かっていく主人公の姿から、私たちは最後まで目を離すことができません。
 93年に演劇愛好者団体の助成金を得て本読み上演が行われ、95年に新作を積極的に取り上げることで定評のあるカリフォルニア州コスタ・メサのサウスコースト・レパートリー・シアターによって初演されました。その後、エドソンの高校時代の同級生、デレック・アンソン・ジョーンズの口利きでニュー・ヘイブンのロング・ウォーフ・シアターで、ジョーンズ自身の演出で上演。無名作家の、癌患者を主人公とした作品ということから最初は敬遠されましたが、上演を重ねるにつれ口コミで評判が広がり、ついに98年、オフ・オフ・ブロードウェイのマンハッタン・クラス・カンパニーの公演でニューヨーク・デビュー。批評家たちの絶賛を浴びてオフ・ブロードウェイのユニオン・スクエア・シアターに移り、ロサンゼルス・ドラマ・クリティクス賞、ニューヨーク・ドラマ・クリティクス賞、ドラマ・デスク賞などの主要な演劇賞を総なめにし、99年度のピュリッツァー賞(戯曲賞)までさらってしまいました。その後、イギリス、フランスなどでも上演され、特にフランス版は往年の名女優ジャンヌ・モローの演出で高い評価を得ました。
 今回の日本初演では、主人公の厳格な英文学者ビビアンに草笛光子、無邪気な優しさでビビアンの心を開いていく看護婦スージーに初舞台となる田中律子ら、豪華なキャストが揃いました。
 人生の素晴らしさを深い感動とともに描いて、世界中の心を癒した傑作「ウィット」に、どうぞご期待ください。


<あらすじ>
 ビビアン・ベアリングは、50歳独身の大学教授。専門は超難解と言われる17世紀の哲学派詩人ジョン・ダンのソネット(14行詩)の研究である。ある日、身体の異常を感じて訪ねた大学病院で、末期の卵巣癌に冒されていることを告げられる。ビビアンは衝撃を感じながらも、持ち前のタフさで、ケレキアン医師の勧める、最新の実験的化学療法を受けることに同意する。
 8か月間、強力な薬品2種類を最大量投与され、副作用で髪の毛を全て失い、激しい嘔吐に見舞われながらも、彼女は、ジョン・ダン研究者としての誇りを忘れず、知的探求心を発揮して医師たちの行動を観察し、自分の置かれた状況を分析していこうとする。ケレキアン医師の若い助手ポスナーは野心的な性格で、大学時代、敢えて厳しいことで知られるビビアンの授業を受けたことがあるという。
かつての教え子に内診される屈辱に耐えつつ、ビビアンは、患者を研究対象としか見ていないこの医者に、研究に明け暮れる人生を送ってきた自分の面影を見る。彼女を見舞いにくる者は一人もいない。
時間を無為に過ごすあせりを感じながら、彼女は自分が国語や言葉に目覚めた幼い頃の父親とのやりとりや、ジョン・ダンの詩について句読点ひとつにもこだわった恩師アッシュフォード女史との会話、神による魂の救済についてのダンの難解な詩を挑むように分析した自分の授業風景を思い出す。
そして、これまでいかに人との心のふれあいに欠けていたかを認識するようになる。
 ある夜、ビビアンは寂しさから、病院内でただ一人彼女を人間として見てくれている看護婦スージーを呼び出す。親子ほど年の離れた若い看護婦の母性的な優しさに、ビビアンは思わず幼子のように泣き出し、不安な心を打明ける。そして、自分の癌が治る見込みがないことを聞き出す。スージーは、もしビビアンの心臓が停止した場合、蘇生させて集中治療室に入るか、そのまま息を引き取るかを選択しておかなければならないと説明する。ビビアンは研究対象として生き長らえるよりも、自然に任せて死ぬ道を選ぶ。今の自分に必要なのは、学術的分析や知識などではなく、思いやりや優しさであることに気づいたのだ。
 激痛を抑えるためモルヒネの点滴を受け、意識が朦朧としているビビアンの病室に、80歳になったアッシュフォード女史が訪ねてくる。弱りきって泣きじゃくるビビアンを慰めようと、「ジョン・ダンの詩を朗読しましょうか」と言うが、ビビアンは拒絶。代わりに女史は、5歳のひ孫のために買った絵本を読んで聞かせる。家出をしようとする子ウサギとお母さんウサギとの会話の中に、神の大きな愛を織り込んだ、素朴で胸に染みる可愛らしい寓話である。ビビアンは安心して眠りに就く。
 次にポスナーが病室を訪れた時、ビビアンの呼吸も心臓も止まっている。癌研究を続けることしか頭にないポスナーは、ビビアンの選択を忘れ、蘇生させようとする。蘇生チームが慌ただしく動き回っているところにスージーが駆け付け、間違いを指摘して力 づくで止めさせる。皆が呆然と立ちすくむ中、魂となったビビアンは、ベッドから抜け出し、生まれたままの姿となって立ち上がり、神々しい光に包まれていく。


ウィット

2002年8月10日(土)〜19日(月) 東京 パルコ劇場
2002年8月21日(水)・22日(木) 大阪 シアター・ドラマシティ


主催:TBSラジオ
企画・製作:(株)パルコ


 ビビアン・ベアリング教授(文学博士)/17世紀イギリス詩を教える大学教授・・・草笛光子
 ハービー・ケレキアン教授(医学博士)/大学病院の医療腫瘍学主任教授・・・鵜澤秀行
 ジェイソン・ポスナー医師/医療腫瘍学の臨床助手・・・佐藤一平
 スージー・モナハン/癌科病棟の主任看護婦・・・田中律子
 エブリン・M・アシュフォード教授(文学博士)/英文学の名誉教授・・・本山可久子
 ベアリング氏(ビビアンの父親)・・・鵜澤秀行(二役)


<スタッフ>
作:マーガレット・エドソン
訳:鈴木小百合(白水社刊)
演出:西川信廣
美術:朝倉 摂
照明:沢田祐二
音響:高橋 巖
衣裳:宇野善子
演出助手:道場禎一
舞台監督:伊達一成
企画・製作:(株)パルコ
<作家プロフィール>
マーガレット・エドソン Margaret Edson
1961年ワシントンDC生まれ。
ジョージタウン大学とスミス・カレッジで文学と歴史を専攻。
アイオワ州の片田舎でバーテンをしたり、ローマの修道院で暮らした経験を持つ。
大学病院のエイズ・癌治療施設で事務職をしていた体験をもとに、1991年初戯曲「ウィット」執筆。
現在はジョージア州アトランタで小学校教師をしており、今後戯曲を書く予定はないと言う。

<ニューヨーク公演劇評より>
「生涯忘れられない、輝かしく人間味あふれる芝居」
(ニューヨーク・マガジン)

「残酷なほど人間的で美しく層を重ねた新しい芝居・・・
  観客は啓蒙され、不思議なことに、大いに癒されるであろう」
(ニューヨーク・タイムス)

「1998年度の新作の中で群を抜いて最も賞賛された戯曲・・・
  この芝居の教訓や喜びは第2のチャンス、神の恩寵に値すると感じる。」
(ザ・ニューヨーカー)

「比類なき体験 ・・・
 聡明で、思慮深く、ウィットに富んでいて、心を締め付ける。」
(ニューヨーク・タイムズ)

「胸がわくわく、どきどきする劇場での一夜。・・・
 『ウィット』は非凡で最高に感動する芝居だ。」
(ニューヨークポスト)

「『ウィット』は絶妙だ・・・
  勇気づけられ、悲しみに触れる90分間の思いがけない体験。」
(ニュースデー)

「説得力があり啓蒙的・・・叙情的な台詞が響き渡る中、
  突然の残酷なほど可笑しな辛辣さで味付けされている。」
(バラエティ)

「エドソンは一流の劇作家だ・・・感動的で、心を魅了する、
   挑戦的な体験は演劇本来の意味を思い起こさせてくれた。」
(ニューヨークデイリーニュース)


<ロンドン公演劇評より>
「感動的で滑稽で、知識人の限界や愛情の価値について実によく描けている・・・
  よくあるアメリカ演劇とは違い、センチメンタリズムに屈することなく、
  人間の率直さへの信頼を照らし出している。」
(タイムズ)

「この作品の賢いところは、感傷やペーソスといった問題をすでに
 テーマとして戯曲に織り込んでしまっている、という点だ。・・・
  『ウィット』の到来は、ウエストエンドを豊かにしてくれる。」
(ファイナンシャル・タイムズ)

「『ウィット』は知的な厳格さと、
 上辺だけの感傷に陥らない深い思いやりに満ちている。
  ・・・ラストの一瞬は、
  ロンドンで観ることのできる他のどんな芝居よりも美しく、秀逸だ。」
(デイリーテレグラフ)


公演概要