「flamenco festival in Tokyo」公式ブログ

サラ・バラス『ボセス フラメンコ組曲』

アンダルシア・フラメンコ舞踊団『イマヘネス』

Introduction

BFA Sara Voces xii by Jullete Valtinedas

C・サウラ監督の映画「フラメンコ・フラメンコ」に深紅の衣装で鮮烈に登場したサラ・バラス。パコ・デ・ルシア、アントニオ・ガデスなど巨匠たちへのオマージュ『ボセス=フラメンコ組曲』を提げて10年ぶりの来日。
 一方のアンダルシア・フラメンコ舞踊団。舞踊団創立20周年を祝し、クリスティーナ・オヨス、マリア・パヘスなど歴代芸術監督の最高傑作をラファエラ・カラスコの演出によって装いも新たによみがえります。

スペイン屈指のフラメンコ舞踊団がこの秋、来日する。
フラメンコはいうまでもなくスペインを代表するアート。
2010年、ユネスコによって世界文化遺産にも認定されているが、地元の人だけで楽しむような民俗芸能ではなく、世界の檜舞台で上演されているグローバルなアートなのだ。 “フラメンコ・フェスティバル”は2001年ニューヨークで始まったフェスティバルで、その後、ロンドンや日本、パリなどでも開催されているフラメンコのフェスティバル。 本場スペインもうらやむほどの、フラメンコ界を代表する豪華な顔ぶれが揃うので有名だ。それが2005年、13/14年に引き続き。今年も日本で開催される。

今回来日するのは、本場スペインで圧倒的な人気を誇るサラ・バラスとフラメンコ生誕の地、アンダルシア州立のアンダルシア・フラメンコ舞踊団だ。 サラ・バラスはそのほとんどの作品がマドリードやバルセロナでロングラン公演されるほどの人気と実力を兼ね備えたダンサー。 天性の華とサパテアードとよばれる足を床に打ち付けて出す技の素晴らしいテクニックで、観る人誰をも虜にする。 アントニオ・バンデラスやセルヒオ・ラモスも彼女のファンだという。 今回は、昨年12月パリで初演された、フラメンコの巨匠たちへのオマージュ作品「ボセス フラメンコ組曲」をもって、10年振りの来日となる。

一方のアンダルシア・フラメンコ舞踊団も愛知万博開催時の名古屋公演以来、10年振りの来日。 昨年舞踊団創立20周年を記念して制作された作品「イマヘネス」を上演する。 こちらは舞踊団歴代監督の作品のイメージを元につくられた作品で、創立当時、舞踊団ソリストだったラファエラ・カラスコが現芸術監督として振り付け、自身も出演する。 洗練された作風で知られる彼女だが、伝統的なフラメンコへの敬愛を美しい舞台づくりと振り付けでみせていく作品はさすがのできばえ。

サラとアンダルシア・フラメンコ舞踊団、いずれの作品もすでにスペイン国内はもちろん、海外でも上演され、高い評価を得ている。 華やかさと奥深さを兼ね備えたフラメンコの魅力にあなたもきっと魅了されることだろう。 フラメンコ・ファンはいうまでもなく、舞踊ファン、スペイン音楽ファンはもちろんのこと、ミュージカル・ファンや一般の音楽ファンにも楽しんでもらえること間違いない。
スペインの熱い魂を、自由な風を、そのままに感じることができるこの舞台、楽しまなくては損である。

サラ・バラス『ボセス フラメンコ組曲』

サラ・バラス / Sara Baras

Sara Voces Vi by Jullete Valtinedas

 スペインで最も人気のあるフラメンコ・ダンサー、それかサラ・バラスだ。
 スペイン各地での公演はニュースとなり、マドリードやバルセロナでは一ヶ月 を越える公演を行い、パリ、ロンドン、ニューヨークと世界の檜舞台で観客を熱狂させる。テレビ番組の司会を務め、ファッションショーで踊る。華やかな笑顔で一瞬のうちに人々をとりこにする彼女はCMにも数多く出演し、オペラ歌手ホセ・カレーラスと共演したかと思うとカルロス・サウラ監督の映画「フラメンコ・フラメンコ」では踊り手のトップをきって深紅の衣装で鮮烈な舞踊をみせてくれた。
 マルチな活躍をみせるサラはスペインの南、大西洋に突き出した港町カディスの生まれ。舞踊教室を開いていた母のもとでこどもの頃から踊りはじめ、90年にはタブラオ「エル・フラメンコ」に出演。アントニオ・カナーレスやエル・グイドらの舞踊団のゲストとして活躍し、1998年、自らの舞踊団を立ち上げた。「センセーション」「ドリーム」といったフラメンコ曲のみの作品のほか、「狂王女 フアナ」「マリアナ・ピネーダ」といったスペインの歴史ドラマ、そして「カルメン」、スペイン憲法200年を記念する「ラ・ペパ」など数々の作品を生み出してきた。2014年夏には「メドゥーサ」をメリダのローマ劇場で初演したばかりだ。
 2003年には舞踊国家賞、翌年にはアンダルシア州金メダルなど重要な賞を多数受賞している、実力と人気を兼ね備えた、スペイン、フラメンコ舞踊界を代表する一人である。

ボセス フラメンコ組曲

ボセスとは声のこと。2014年2月急逝したフラメンコ・ギターの神様パコ・デ・ルシアを始め、日本にフラメンコブームを巻き起こした舞踊家アントニオ・ガデスら、道半ばでこの世を去ったフラメンコの巨匠たち、サラにそして現代フラメンコに多大な影響を与えた先駆者に捧げられた作品。彼らと親しくしていたサラだからこそ、彼らのアートだけでなく、直接聞いた彼らの声にインスパイアされ、彼らへの思いを、サラ自身の声で届けるのがこの作品。2014年12月22日、パリ、シャンゼリゼ劇場で初演し、後、3月にはアメリカ各地、後、生まれ故郷のカディスをはじめ、スペイン北部ビルバオなど各地での上演が初演の前にすでに決定している。
 これは彼女の代表作『狂王女フアナ』のように筋書きのあるドラマ作品ではない。パコ・デ・ルシアにはシギリージャ、フラメンコ不世出の天才歌手カマロンにはタラント、アントニオ・ガデスにはファルーカ、現代フラメンコに多大な功績を残したエンリケ・モレンテにはソレア、十代のときに共演したギタリスト、モライートにはソレア・ポル・ブレリア、そして唯一サラが生まれる前に亡くなった舞踊家カルメン・アマジャにはブレリアと、それぞれの巨匠たちそれぞれにフラメンコの曲を捧げ、綴って行くフラメンコの組曲。
 スペインが誇るカリスマ・スター、サラ・バラスはソロで5曲、ゲストダンサーであるスペイン国立バレエ団出身のホセ・セラーノとデュオで1曲を踊る。6人の群舞、3人の歌い手とギター2人、パーカッション2人が奏でる音楽にのせて、サラの心からの声が聞こえてくることだろう。

志半ばで去った巨匠へ捧ぐ

■パコ・デ・ルシア
(1947年12月21日カディス県アルへシーラス〜2014年2月25日メキシコ、プラジャ・デル・カルメン)
ギタリスト。フラメンコの神とも称される現代フラメンコの功労者。

■カマロン・デ・ラ・イスラ
(1950年12月5日カディス県サン・フェルナンド〜1992年7月2日バルセロナ県バダローナ)
歌い手。パコ・デ・ルシアとともにフラメンコの新時代を築いた天才歌手。

■アントニオ・ガデス
(1936年11月14日アリカンテ県エルダ〜2004年7月20日マドリード)
舞踊家。1962年自らの舞踊団を結成し世界中で公演。舞台芸術としてのフラメンコを極めた。

■エンリケ・モレンテ
(1942年12月25日グラナダ〜2010年12月13日マドリード)
歌い手。伝説的な歌い手たちとの交流から多くを学び、フラメンコの新しいスタイルを創りあげていったマエストロ。

■モライート・チーコ
(1956年9月13日カディス県ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ〜2011年8月10日ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ)
ギタリスト。フラメンコの名門一家に生まれ、伝統を受け継いだ伴奏の名手。

■カルメン・アマジャ
(1918年11月2日バルセロナ〜1963年11月19日ジローナ県バグール)
踊り手。幼少の頃から踊り始め、世界を舞台に活躍。足さばきの技術は唯一無比。

Text 志風恭子(フラメンコ研究家)

CAST

Sara Voces by Santana de Yepes X

■Direction and Choreograph / DANCE
Sara Baras サラ・バラス

■Guest Dancer
José Serrano ホセ・セラーノ

■Dancers
María Jesús García Oviedo マリア・ヘスース・ガルシア・オビエド
Charo Pedraja チャロ・ペドラハ
Cristina Aldón クリスティーナ・アルドン
Daniel Saltares ダニエル・サルタレス
David Martín ダビ・マルティン
Alejandro Rodríguez アレハンドロ・ロドリゲス

■Musicians
Guiter:Keko Baldomero ケコ・バルドメロ / Andrés Martínez アンドレス・マルティネス
Sing:Rubio de Pruna ルビオ・デ・プルーナ / Miguel Rosendo ミゲル・ロセンド / Israel Fernández イスラエル・フェルナンデス
Percussion:Antonio Suárez アントニオ・スアレス / Manuel Muñoz “Pájaro” マヌエル・ムニョス”パハロ”

アンダルシア・フラメンコ舞踊団『イマヘネス』

アンダルシア・フラメンコ舞踊団

BFA

フラメンコの保護をその法令で定めるアンダルシア州(正確には自治政府)立の舞踊団として1994年誕生。
 当初はアンダルシア舞踊団という名前だったが、2004年アンダルシア・フラメンコ舞踊団と名前を替えた。
 マリオ・マジャ、マリア・パヘス、ホセ・アントニオ、クリスティーナ・オヨスと、スペイン舞踊の歴史に残る偉大な舞踊家たちが歴代の芸術監督をつとめ、アントニオ・ガデスから現代フラメンコを代表するエバ・ジェルバブエナ、ハビエル・ラトーレらまで、錚々たる舞踊家たちの振り付け作品を上演してきた。
 ニューヨーク、ロンドン、パリはもちろん、イタリア、スイス、ギリシャ、キューバ、メキシコ、アルゼンチン、中国など世界各国で公演、日本へも1998年東京、2005 年愛知万博と2回やってきている。
 創立メンバーだったイスラエル・ガルバン、ベレン・マジャ、イサべル・バジョンをはじめ、ラファエル・カンバージョ、フェルナンド・ロメーロら多くの一流フラメンコ舞踊家を輩出してきた。 2011年より芸術監督は公募となり、5代監督をルベン・オルモが勤め、ラファエラ・カラスコがそれを継いで現在にいたる。ラファエラはこの舞踊団の創立メンバーの一人で、後、ソロで活躍。洗練されたスタイルのフラメンコで知られる彼女は2002年創立した彼女の舞踊団でも次々と素晴らしい作品を発表してきたが、2013年秋にアンダルシア・フラメンコ舞踊団芸術監督就任。2014年1月「エン・ラ・メモリア・デル・カンテ1922」を初演。

■芸術監督 ラファエラ・カラスコ Rafaela Carrasco
セビージャ生まれ。
8歳のときからフラメンコ舞踊の巨匠マティルデ・コラル門下で学び、18歳でマリオ・マジャ舞踊団入団。1994年創立時マリオ・マジャが監督を務めたアンダルシア舞踊団へ。退団後はセビージャやマドリードのタブラオで活躍。1998年には新宿「エル・フラメンコ」に出演している。2002年にはスペイン舞踊とフラメンコの振付けコンクールで最優秀振付け、最優秀音楽、最優秀舞踊家賞を受賞。自らの舞踊団での活動をはじめ、2010年には世界最大のフラメンコ祭セビージャのビエナルで最優秀振付賞、またマドリード共同体の文化賞を舞踊部門で受賞するなど高く評価されている。2013年アンダルシア・フラメンコ舞踊団の芸術監督に就任。2014年初めに「エン・ラ・メモリア・デル・カンテ1922」を初演。秋に舞踊団20周年記念作「イマへネス」を初演した。

イマヘネス

アンダルシア・フラメンコ 舞踊団創立20周年記念作品として、芸術監督ラファエラ・カラスコがつくりあげた同舞踊団30番目の振付作品。2014年9月、世界最大のフラメンコ・フェスティバル、ビエナルで初演された。
 記念作品といってもこれまでの作品のアンソロジーではない。振り付けは現在のラファエラ・カラスコと舞踊団ソリストの一人、ダビ・コリア。音楽は舞踊団ギタリストと歌い手たちによるフラメンコ曲。歴代の監督たちの作品の、カンテラやマントン(フラメンコで使う大判のショール)といった小物などのデテールから自由にイメージをふくらませていく。イマヘネスとはイメージ、画像のこと。舞踊団の歴史の中の瞬間の画像がラファエラのイメージする力で大きくはばたく。全編を通してシンプルで美しくスタイリッシュ。大掛かりな装置などはなにもない舞台だが映像を効果的に使用し、見事な舞台空間を生み出している。フラメンコの伝統をふまえ、卓越したテクニックと現代的な美学を もって展開していくフラメンコ絵巻は初めてフラメンコを観る人も、昔からのファンも魅了することたろう。

歴代の芸術監督

■マリオ・マジャ
(1937年10月23日コルドバ〜2008年9月23日セビージャ)ピラール・ロペス舞踊団を経て、マドリードを初め南北アメリカで活躍。自らの舞踊団から多くの優秀な舞踊家を輩出した。1994年アンダルシア舞踊団創立時の監督を務めた。

■マリア・パヘス
(1963年セビージャ生まれ) マティルデ・コラルらに師事し、若くしてプロに。アントニオ・ガデス舞踊団等を経て、1996年アンダルシア舞踊団に「アンダルシアの犬。ブルレリアス」を振り付け、97年同舞踊団監督に就任したが数ヶ月で退任。現在は自らの舞踊団で活躍。

■ホセ・アントニオ
(1951年マドリード生まれ) 78年スペイン国立バレエ団創立時の第一舞踊手。一時退団したものの1986年より92年同バレエ団芸術監督。97年よりアンダルシア舞踊団監督。2004年から7年間国立バレエ団監督を再び勤めた。

■クリスティーナ・オヨス
(1946年セビージャ生まれ) 12歳で初舞台を踏んだ早熟の踊り手は1968年以来アントニオ・ガデスの相手役を長年に渡り務め、1989年自らの舞踊団を結成。バルセロナ五輪開会式出演をはじめ世界中で公演した。2004年アンダルシア舞踊団監督就任。6作品を振り付け、初演した。

■ルべン・オルモ
(1980年セビージャ生まれ)セビージャの舞踊学校に学び、18歳でスペイン国立バレエ団入団。2006年に自らの舞踊団結成。2011年から 13年までアンダルシア舞踊団監督を務めた。

Text 志風恭子(フラメンコ研究家)

CAST

anndaru02

■Artistic Director
Rafaela Carrasco ラファエラ・カラスコ

■Dancers
David Coria ダビ・コリア
Ana Morales アナ・モラーレス
Hugo López ウーゴ・ロペス
Alberto Sellés アルベルト・セジェス
Alejandra Cudí アレハンドラ・グディ
Antonio López アントニオ・ロペス
Paula Comitre パウラ・コミトレ
Laura Santamaria ラウラ・サンタマリア
Eduardo Leal エドゥアルド・レアル
Florencia O’Ryan フロレンシア・オリアン
Carmen Yanes カルメン・ヤネス

■Musicians
Guiter:Jesús Torres ヘスース・トーレス / Juan Antoio Suárez “Cano” フアン・アントニオ・スアレス”カーノ” Sing:Antonio Campos アントニオ・カンポス / Gabriel de la Tomasa ガブリエル・デ・ラ・トマサ

A Production of Instituto Andaluz del Flamenco,Agencia Andaluza de Instituciones Culturales