2001年公演で実現した、寺山修司・ハツ親子を実際に知る美輪明宏でしか紡ぎえない演出。
耽美・エロ・グロ・ロマンなど、視覚的に感覚的に、さまざまな要素をちりばめながら、家族のあり方や生きることの意味を描いており、また、母性の欠如、家族の崩壊が問われる現代にも通じる普遍的なテーマを持つ作品です。
『職業 寺山修司』という言葉に代表される様に、多岐に渡る活動で、その才能を遺憾なく発揮した寺山修司。
劇作や演出はもとより俳句、詩歌、小説、評論、映画監督そして競馬ファン、ボクシングファンとそのフィールドを語るときりがない日本の誇るマルチ天才アーティストです。
その活動は日本のみに留まりません。フランス、オランダ、イタリア、ポーランド、ドイツ、イギリスそしてアメリカと、世界各地で演劇活動を行ったのみならず、海外での映画賞も数多く受賞しています。
その寺山修司により、1967年日本初のアングラ演劇として産声を上げた、演劇実験室◉天井棧敷。東京オリンピックを経て全共闘、そして高度経済成長へと向かう時代の中、1967年(昭和42年)『演劇における見世物の復権』『幻想演劇による時代への告発』をテーマに旗揚げされました。
当時、美輪氏が本拠地として活動をしていた銀座七丁目のシャンソン喫茶 銀巴里。この銀巴里にも顔をのぞかせていた寺山修司は、この「天井棧敷」旗揚げに際し、美輪氏へ出演依頼をします。美輪氏のために作品を書いたというのです。
そうして、第一回公演作品「青森県のせむし男」が上演され、同年第三回公演として今回の「毛皮のマリー」が上演されました。公演が行われた新宿アートシアターは連日超満員、劇場記録を塗り替え様々な伝説が生まれました。
このようにして、寺山氏とともに旗揚げから参加をし、また支えていた美輪明宏氏(劇団員として所属していたわけではない)。寺山氏の書いたものを、美輪氏は寺山氏本人以上に理解し、彼の書くものに普遍的解釈を加えていきました。
その著書は、出せばベストセラーとなるほど人気を博す美輪明宏。
『紫の履歴書』を筆頭に、『人生ノート』『愛の話 幸福の話』『花言葉』・・・・・
また、公式携帯サイト『麗人だより』は、携帯電話の待ち受け画面にすると良いことが起こるという都市伝説がきっかけで開かれました。
まさに現代のオピニオン・リーダーとして、世代を超え、男女を超え、老若男女幅広い支持を得ています。その核心は、ユーモアを交えて分かりやすく、しかし、はっきりと物事の本質というものを明らかにしていることによります。
美輪明宏の芝居創りは まず第一に、渋澤龍彦、川端康成、安岡章太郎、三島由紀夫など文壇のトップと対等に渡り合ってきた美輪氏の文学センス、行間を的確に読み説く理解力の深さ・鋭さによります。
第二に文学・演劇・音楽のみならず絵画・彫刻・映画など芸術全般にわたるその造詣の深さ。時代背景・社会背景をもとにしたファッション・風俗などの知識の豊富さ。すべての物事を、本質的に捉える観察力。これらの鋭い理解力・知識などを核に、無駄なく必要十分にそして変幻自在・縦横無尽に巧みな技術を使い表現するその演技術。
と同時にエンタテイメントとして、実は深遠なテーマを、分かりやすく劇的に表現し、観客を魅了してしまう演出力。
これらすべてが一体化し見るものの心を奪い、実績を積み重ねてきているのが美輪明宏演出作品なのです。妖しくも哀しい物語が頽廃美あふれるゴージャスにして魅惑的な世界として描かれる「毛皮のマリー」。7年ぶりの再演となります!ご期待ください!!