INTRODUCTION イントロダクション

中谷美紀主演!あの傑作をふたたび。初舞台にして、各演劇賞に輝いた文豪井上靖『猟銃』。カナダ人演出家 フランソワ・ジラールが一人の男への三人の女のラブストーリーを舞台で描く。

アカデミー賞受賞歴を持つ映画監督であり、NYメトロポリタン・オペラも手掛ける
演出家フランソワ・ジラールが、日本の誇る文豪井上靖の名作小説『猟銃』を、
日本人女優・中谷美紀を起用して完全舞台化し、日本とカナダの才能を結集して創り上げたのが
この「猟銃」という国際プロジェクトです。
2011年にカナダ・モントリオール、日本は東京をはじめ各地方にて上演し、
その舞台の美しさと中谷美紀の熱演により好評を博した本公演を、ふたたび上演いたします。

『レッド・バイオリン』(1998年公開)でアカデミー賞を受賞する等、数々の受賞作品を持ち、
世界から注目を集めるカナダの演出家フランソワ・ジラール。
2013年にはニューヨーク・メトロポリタンオペラでワーグナーの『パルシファル』を演出し、
名実ともに「実力派」の演出家としてその名を輝かせています。
今秋日本においても公開されたダスティン・ホフマンの『ボーイ・ソプラノ』では
久しぶりにメガホンを握りました。
映画に留まらず、オペラ、演劇・・・、全てのエンターテインメントに秀でた才能を持つフランソワ・ジラールが
井上靖『猟銃』の舞台化にあたり日本のトップ女優・中谷美紀を迎えて彼女の初舞台を華々しく飾り、
カナダ、日本でも大成功を収めました。

中谷美紀の凛としたその姿と力強い目線は、スクリーンを通して私たちにその圧倒的な存在を与え、
その強い存在感は女性層から圧倒的な支持を得ると同時にあこがれの女性でもあります。
その彼女が演じるのは三人の女性。
ある男の13年間にわたる不倫の恋を通して、その男の妻である【 みどり 】、愛人の【 彩子 】、そして愛人の娘【 薔子 】。
一人はその不条理を怒りにぶつけ、一人は自らも嘲りながら哀しみとともに力強く、
そしてもう一人は井戸の底のように静かに・・・・。
万華鏡のように変幻する女たちの心を中谷美紀が演じることによって、
「女性」の中にある愛と憎を浮き彫りにしてゆきます。
2013年「ロスト・イン・ヨンカーズ」、2015年「メアリー・ステュアート」と
舞台女優としてもその天分を輝かせた中谷美紀が、5年の歳月を経てふたたび3人の女を演じることにも注目です。

登場人物は妻、愛人、そして愛人の娘 三人の女性の「手紙」に込めた一人の男への其々の愛を中谷美紀が体当たりの演技で表現。万華鏡のごとく、「愛」のかたちを演じる。

ひとりの男の13年間にわたる不倫の恋を、妻、愛人、愛人の娘の
三通の手紙によって浮き彫りにした井上靖の恋愛小説『猟銃』。
この三人の女性を一人の女優が演ずることによって、
男に対する立場の違う三人の女性の中に秘められた“男”への想いの共通項を浮かび上がらせます。
今回この三人の女性を演ずることになった中谷美紀は、映画『シルク』撮影中、
演出のフランソワ・ジラールから出演を依頼され、遂に初舞台に挑戦することになりました。

そして、三人の女性から手紙を送られた男を、演出家が絶大なる信頼をおく
フィジカル・アクターのロドリーグ・プロトーが抜群の身体能力で象徴的に演じます。
どうぞご期待ください!

ABOUT -猟銃-

『猟銃』は一人の男、三杉譲介に宛てられた三人の女性の手紙で構成された書簡体小説。
その三人の女性とは妻のみどり、愛人の彩子、その愛人の娘の薔子からの手紙。
この3通の手紙によって13年間に渡る不倫の恋が暴かれてゆく。

『猟銃』は、昭和24年10月雑誌「文学界」に発表された。
第22回芥川賞受賞作品『闘牛』(昭和24年12月雑誌「文学界」発表の第二作目)と併録。
1961年には五所平之助監督により、映画化。

登場人物

薔子 … 彩子の娘 みどり … 三杉穣介の妻 彩子 … 三杉穣介の不倫相手 三杉穣介 詩人

井上靖(1907–1991)

曾祖父の愛人で、反骨の元芸者に育てられた井上靖は、医学の勉強を捨て、言語での戦いとジャーナリズムの世界に身を投じる。
京都で哲学を学び、ポール・ヴァレリーの詩についての論文をものした後、文芸誌にいくつかの詩が取り上げられる。だが小説を志したのは、戦後、四十代に入ってからのことだった。1949年、処女作『闘牛』が権威ある芥川賞を受賞。彼の小説は自らの執着を反映し、不倫と家訓のしがらみをモチーフにした自伝的な性格を持つものが多い。戦争の影響を色濃く受けた井上は、歴史に深い関心を抱いていた。歴史小説では徹底して証拠に当たり、また中国と日本の関係や宗教が文化に及ぼす影響といったデリケートなテーマを扱っている。作品は数カ国語に翻訳され、映画化されたものもある。中でも堀川弘通監督の『あすなろ物語』、またもっとも良く知られる小説『本覺坊遺文』は、1989年熊井啓監督の『千利休』として映画化され、ヴェネチア映画祭で金獅子賞を獲得した。

HISTORY ヒストリー

「猟銃」上演記録

<カナダ・モントリオール公演>
2011年 9月7日(水)~9月10日(土) USINE C

<日本凱旋公演>
2011年10月3日(月)~23日(日) パルコ劇場
2011年10月29日(土)・30日(日) 兵庫県立芸術文化センター
               阪急 中ホール
2011年11月6日(日) りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)・劇場
2011年11月18日(金)・19日(土) キャナルシティ劇場
2011年11月23日(水)・24日(木) 名鉄ホール
2011年11月27日(日) 京都芸術劇場 春秋座

公演特設ページ

受賞歴

<第19回読売演劇大賞>
優秀作品賞
優秀女優賞(中谷美紀)
優秀スタッフ賞
(フランソワ・セガン(美術)、デイヴィッド・フィン(照明))

<第46回紀伊國屋演劇賞>
個人賞(中谷美紀)
団体賞(株式会社パルコ)

猟銃

REVIEW レビュー

一人の日本女性により魔法を掛けられた魅力

舞台上で、一人のうら若き女性、彼女は自殺した愛人で、恋に身をやつした女の娘。その足取りは非常に控え目だが、母のしたこと、つまり父を裏切り、自らの命を断ったことを受け入れ難い気持を身体全体で表わしている。
日本、その他の国々でテレビや映画における輝かしい活躍を経て、舞台で初体験を見た中谷美紀がこの第一部の間、私には存在感が希薄で、所作も上滑りし、声の抑揚も不自然に思えた。しかし実はそれはトリックにすぎたなかったことに気付かされた。2部への移行で激烈な女優が用意されていたのであった。第二部において、蓮の池が岩で満たされた空間に変わりその上で夫に裏切られ、(自分もまた彼を裏切った)妻が内に潜んでいた唸り声を挙げようとしている。
巧妙にセットされた音楽に導かれ、感情を爆発させて行く中、中谷は全力を出しつくす。
彼女は官能的で、自信に満ち、魅惑的で、触手を四方八方に伸ばし、恋多く、女であり、裏切り、裏切られ、激怒する。

次に娘の母であり、人の夫の愛人が来る。
岩から木板へと、また恋する死者が魅惑的にキモノを「組み合わせ」てゆく場面となる。落ち着き、心静かでピュアな愛人は自殺を図り、愛する人に宛てた手紙の中で、自らの命を絶った理由を説明する。彼女は彼に、深い「己」と呼んでいるもの、あらゆる人間の中に存在する情熱的かつ危険なものとは何かを打ち明ける。

明らかに最後まで女優の所作一つ一つが、井上靖の台本と並ぶごとく、ある者にとっては恍惚として冷たく、難解であり、またある者にとっては、パワフルでくどく、しかし卓越している。

最後の瞬間が流れ、ほの白く輝く中谷は、感動し、揺れながら、
膝まづく。大喝采を送り、会場を去った殆どの観客と同じように。。。

眩いばかりの中谷美紀

「猟銃」という作品は、ありきたりというところが殆どない。
本質的に書簡の語りものを曲用したこの作品は、一人の男に宛てられた3通の手紙から構成されており、手紙は、男の愛人で死亡した女、男の妻、愛人の娘からそれぞれ宛てられている。
これら3つの眼差しは、同一の罪深き愛情に向けられ、これら3つの語りたいという欲求が、一糸まとわぬ純粋な気持ちで、自分の感情を吐露させ、 そこには幾つかの傷を残す沈黙の3つのかたちがある。無言で奥に引き込んでいるロドリグ・プロトーとの相互作用は最小であり、ほぼ舞台上に一人のいる中谷美紀は、(彼女が演じる)正反対の役の人物像に対し、其々にうってつけの声の抑揚や其々の身体・声の出し方を見出している:傷つき・怖気づいたみなし子、踏みにじられた妻は自らの不幸の静かなる共犯者であり、報復を狙っている、そして心静かで情け深い愛人。舞台美術が次々と変化する中、作品が示すゆっくりとした動きに見事に自らを描きだしながら、女優はごく自然にかつ優雅に一人の女から別の女へと変わって行く。

フランソワ・ジラールは感情よりむしろイメージや雰囲気に重きを置いているものの、この主役は死にゆく愛人役において実に感動的であった、特に自らキモノを纏うための正確な身ぶりやセリフと彼女の甘い声は、完璧な調和を見出した。
事実、このシーンは強烈に心に残る。この布地の中で彼女の身体に紐や帯が巻きつく程、彼女はこの拘束服の中に自らを閉じ込め、この人物は死へと近づいてゆく。役者は巧みに動きのリズムを減らして、自らの表情を制限して行く。彼女が壮大な美の仮面になるが故に、巨大な愛すらそれを突き通す術をしらない。

CAST& STAFF キャスト& スタッフ

スタッフ

原作/井上 靖
翻案/セルジュ・ラモット
日本語台本監修/鴨下信一
演出/フランソワ・ジラール
美術/フランソワ・セガン
衣裳/ルネ・アプリル
照明/デイヴィッド・フィン
音響/アレクサンダー・マクスウィーン
プロデューサー/佐藤玄 毛利美咲
製作/井上肇
後援/TOKYO FM カナダ大使館 ケベック州政府在日事務所
企画製作/株式会社パルコ・USINE C

キャスト

中谷美紀
ロドリーグ・プロトー

プロフィール

フランソワ・ジラール/演出

フランソワ・ジラールは主として映画監督・脚本家と同様に演劇やオペラの演出家としても知られ、彼のプロジェクトは、世界中の観客の称賛を受け、実に100以上もの賞を与えられている。1980年代、モントリオールのアートビデオ界で、短編の実験映画、建築・ダンスフィルム、音楽ビデオ、ビデオ・インスタレーションの監督及び脚本家としてプロとしてのキャリアを歩み出す。
1990年、初めての長編作品「Cargo」を製作。同年、ケベックのダンス/演劇/マルチメディアカンパニーであるCarbone 14の創立者、ジル・マウによる劇場スペクタクル「Le Dortoir」のテレビ版を演出、同作品によって国際エミー賞、Gold FIPA賞(フランス)、ジェミニ賞(ケベック)を受賞。他、テレビ作品にグラミー賞(アメリカ)受賞の「ピーター・ガブリエルズ・シークレット・ワールド」、「Yo Yo Ma Inspired by Bach」の六つのエピソード中の一つ「The Sound of the Carceri」がある。
1993年、長編伝記映画「グレン・グールドをめぐる32章」で国際的成功を収める。長編第3作である「レッド・バイオリン」(1998)は大成功を収め、カナダ・ジニー賞を主要8部門で受賞(最優秀作品賞、最優秀監督賞を含む)、ケベック・ジュトラス賞9部門、さらにアカデミー賞最優秀オリジナルサウンドトラック賞受賞。2007年には、アレッサンドロ バリッコのヒット小説『シルク』を映画化、同作品は一部日本で撮影された。舞台にも進出し、カナダ・オペラカンパニーにおけるストラヴィンスキーの詩編交響曲、ジャン・コクトーの「オイディプス・レックス」でオペラデビューを果たしカナダでDora Mavor Moore賞を8部門で受賞。他、舞台では、アレッサンドロ バリッコ作の「海の上のピアニスト」を演出、カナダおよびエジンバラで上演。モントリオールのテアトル・ドゥ・ヌーボーモンドおよびオタワのナショナル・アート・センターでのカフカの「審判」、ブルックリン音楽アカデミーでの「the oratorio Lost Objects」を演出、「ジークフリード」をトロントで演出、上演した。「Le Vol de Lindbergh et Les Sept Peches capitaux(リンドバーグ飛行および七つの大罪)」(2006)「The Seven Deadly Sins」をまずフランス国立リヨン歌劇場、次いでエジンバラ、スコットランド、ニュージーランドのウェリントンでも上演しているF.ジラールは、エジンバラ演劇祭において最優秀作品としての“ヘラルド・エンジェル賞”を3度獲得している。シルク・ドゥ・ソレイユ「ZED(ゼット)」を手がける。近年は、女流作曲家「Kaija Saariaho」の「Emilie(エミリ)」が2010年リヨンオペラ座で上演され、ワーグナーの神聖祭典劇「Parsifal(パルジファル)」がNYメトロポリタン・オペラにて上演、絶賛される。今秋日本公開映画 ダスティン・ホフマン主演「ボーイ・ソプラノ」では久しぶりにメガホンを握った。

中谷美紀/出演

1976年生まれ、東京都出身。確かな演技力と透明感のある佇まいで多数のTVドラマ、映画で活躍。03年『壬生義士伝』で第27回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。06年『嫌われ松子の一生』で第30回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など多数受賞。また初舞台となった11年パルコ・プロデュース『猟銃』(USINEC・パルコ劇場他)で第46回紀伊國屋演劇賞個人賞、第19回読売演劇賞優秀女優賞を、さらに13年のパルコ・プロデュース『ロスト・イン・ヨンカーズ』(パルコ劇場他)のベラの演技により、第21回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した。15年1月には主演映画『縫い裁つ人』の公開が控える。近年の主な出演作品に《映画》『リアル〜完全なる首長竜の日〜』(13/黒沢清監督)、『清須会議』(13/三谷幸喜監督)、『利休にたずねよ』(13/田中光敏監督)、『乾き。』(14/中島哲也監督)《TVドラマ》『花の鎖』(13/CX)、『軍師官兵衛』(14/NHK)、『宮本武蔵』(14/EX)。 『縫い裁つ人』(15/三島有紀子監督)。『FOUJITA『(15/小栗康平監督)。2015年6月マックス・ウェブスター演出『メアリー・ステュアート』(パルコ劇場)では迫真の演技で観客を魅了した。

ロドリーグ・ブロトー/出演

1956年モントリオール生まれ。オタワ大学でコミュニケーションを学んだ後、コーポリアル・マイム をオムニバス(1982-1984)で学び、本カンパニーと共に公演を始める。1987年、Carbone 14(カーボン14)に加わり、1997年まで、主としてジル・マウの演出で、「Le Rail(レール)」 、「Le Dortoir(共同寝室)」、「La Foret(森)」「Hamlet-Machine(ハムレット・マシーン)」、「Les Âmes Mortes(死せる魂)」を含め、10ほどの作品に出演。エネルギッシュなスタイルを持つ役者、ダンサー、クリエイターであり、舞台にアクロバティックな緊張感と、神秘的と言えるほどのオーラをもたらす。1990年、フランソワ・ジラール監督で映画化された「Le Dortoir(共同寝室)」では彼の素晴らしい役柄をかいま見ることができる。Carbone 14を退団後、何人かの演出家と仕事をし、プロダクションにムーブメントを加える重要性を認識。1998年には、ロベール・ルパージュ演出による「Zulu Time(ズールー・タイム)」「Geometry of Miracles(ジェオメトリー・オブ・ミラクルズ)」という作品の発案者兼パフォーマーとして参加、ベルゼブブ(魔王)役で狂気のような演技を見せた。また、パオラ・デ・ヴァスコンセロス演出によるピジョン・インターナショナルのプロダクション2作品「L`Autre(他方)」(2001)と「Cinq Heures Du Matin(朝5時)」(2005)にも参加。これと平行して、シルク・ドゥ・ソレイユにおいてアーティスティック・コーチ(2000-2011)、アクティング演出補(フランソワ・ジラール、ゼッド、トウキョウ2008-/ザルカナ、ニューヨーク2011)およびアーティストを務め、ドミニック・シャンパーニュ演出による「ヴァレカイ」(2002-2004)のガイド役や、ラスベガスのミラージュ・カジノにおける、ビートルズへのオマージュ作品「Love(ラヴ)」(2006-2007)のサージェントペパー役を創り出した。また、ドミニック・シャンパーニュ演出での「Paradis Perdu(失楽園)」(2010)では、革新的なマルチメディアの舞台で兵士を演じた。フランソワ・ジラール演出では、USINE C、モントリオール、CNAの東京のパルコ劇場で上演された「猟銃」(2010-2011)の穣介を演じた。2012年から現在までは、「ヴァレカイ」のツアー、シルク・ドゥ・ソレイユ、南アメリカへのツアー(ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、コスタリカ、メキシコ)、および、アメリカ合衆国からカナダ、ヨーロッパに度々ツアーに出ている。その独創性と厳しさで、「肌、肉、骨」の間の仮想世界を探求する、力強く際立った舞台芸術を作り出す。

セルジュ・ラモット/翻訳

この十年間に小説6作(1998「La longue portee(長距離)」、2000「La tierce personnel(三番目の人)」、2002「L’ange all berceau(天使のゆりかご)」、2004「Les Baldwin」、2007年の「Tarquimpol」(2008年度本屋賞の最終選考作品の一つ)、2009「Metarevers」を執筆、詩「Tu n’as que ce sang」(2005)、戯曲作品(「Le Proces de Kafka et Le Prince de Miguasha」(2005))も発表。2003年「Le Prince de Miguasha」(Alto)でイブ・テリオ賞を受賞。
2004年、カフカの「審判」を舞台戯曲として翻案、フランソワ・ジラール演出によりTheatre du Nouveau Mondeで上演された。フランス国立リヨン歌劇場(「Le Vol de Lindbergh Les Sept Peches capitaux(リンドバーグ飛行および七つの大罪)」(2006)、「Emilie」(2010)。 およびシルク・ドゥ・ソレイユ(「ZED」東京/2008)で脚本、およびスクリプトライティングのコンサルタント(「シルク」2007)も務める。2004年以来、ケベックとフランスでのポエトリー・スラム(制限時間内に詩を朗読してその内容とパフォーマンスの優劣を競う競技)に参加。ケベック文学の推進に熱心に取り組み、国際文学フェスティバル(FIL)の理事会メンバーでもあり、またケベック作家協会(UNEQ)の副議長も務めている。

フランソワ・セガン/装置デザイン

フランソワ・セガンは1971年から1974年、モントリオールのCollege Lionel Groulxで装置デザインを学び、テアトル・ドゥ・リドーベール、La Nouvelle Compagnie Theatrale(NCT)、グレート・カナディアン・バレエ、テアトル・ド・カツ等名だたるカンパニーで、フランソワ・バルボーを始め、モントリオールの演劇界を代表する演劇人との仕事からプロとしてのキャリアを歩み始める。1976年装置デザイナーとしてデビュー。以降、ナショナル・アート・センター(オタワ)、Theatre d’Aujourd’hui、アンドレ・ブラサールと共にモントリオールNCTをはじめ、カナダ国内および海外でもさまざまな演劇・オペラプロダクションを手掛ける。「ZED」のライターで演出家でもあるフランソワ・ジラールとは以前にも、Bang on the Canという集団によってニューヨークで上演されたコンテンポラリー作品「The Lost Objective」というオラトリオプロダクションセットのデザインや、エジンバラおよびニュージーランドのウェリントンで上演されたベルトルト・ブレヒトの「The Lindbergh Flight/The Flight Over the Ocean」と「The Seven Deadly Sins」の二本立ての仕事を共にしている。主な映像作品におけるクレジットに「シルク」(2007)、「レッド・バイオリン」(1998)があり、どちらもフランソワ・ジラール脚本、監督だが、他にも「Ludy Number Slevin」(2006)、「The GreG/est Game Ever Played」(2005)、「Les Invasiolls Bm'bares」(2003)、「Afterglow」(1997)、「Mrs. Parker and the Vicious Circle」(1994)、「Love & Human Remaills」 (1993), 「Leola」 (1992) 、「Jesus de Montréal(Jesus of Montreal)」(1989)等多くの監督の長編作品を手掛けている。本作品にて第19回読売演劇大賞スタッフ賞受賞

ルネ・アプリル/衣装デザイン

ルネ・アプリルは、お針子だった母から上質な布地、特にブロケードと豪華なベルベットに関する審美眼を受け継ぎ、12歳から布のデザインを始めた。1974年、モントリオール近郊のCollege Lionel-Groulxで演劇教育を終えると、舞台装置の仕事を始めたが、間もなく衣装デザインへと進路を変更する。
フェルナンド・メイレレス監督の「ブラインドネス」(2008)、ショーン・レヴィ監督の「ナイト・ミュージアム」(2006)、ローランド・エメリッヒ監督の「デイ・アフター・トゥモロー」(2004)、ジョージ・クルーニー演出・主演の「Confessions of a Dangerous Mind」(2002)、ブルース・ ベレスフォード監督の「ブラック・ローブ」(1991)をはじめ、最近もっとも良く知られたアメリカおよびカナダ映画に携わる。
また「ZED」の脚本および監督のフランソワ・ジラールの「レッド・バイオリン」でも衣装デザインを担当。ルネ・アプリルは、ジェミニ賞(カナダ)、「レッド・バイオリン」での最優秀衣装デザイン賞を含めジェニー賞(カナダ)を3度、同作品でジャトラ賞(ケベック)の最優秀アートディレクション賞を受賞するなど、多くの賞を受賞している。

アレクサンダー・マクスウィーン/音響デザイン

1964年モントリオール生まれのミュージシャンであり作曲家であるアレクサンダー・マクスウィーンは、数多くの映画、ダンス、演劇プロジェクトに参加。
ルイーズ・ベダール、エステル・クレアトン、ジネット・ローラン、ロベール・ルパージュ、モントリオール・ダンス、ジョゼ・ナバス、クリスタル・パイト、リチャード・シーガルの作品に携わる。また、女優マリー・ ブラサードの「The Darkness」「Peepshow」という作品で、共に良くツアーもしている。アレクサンダーの作曲ではしばしば、さまざまな技術を駆使して人間の声を操作した音が使われる。ドラマーとしても活躍、ロック、電子音楽、インプロビゼーションと幅広いジャンルをこなす。これまでパオロ・アンジェリ、バイオニック、ティム・バーン、ミシェル・F・コテ、フランク グラトコウスキー、ザ・ニルス、サム・シャラビ、マルタン・テトローと共演している。現在はベルナール・ファレーゼ、ファリッズィオ・ジラルディーノと共にトリオFoodsoonのメンバー。2006年6月、モンス(ベルギー)のシティソニックス・フェスティバルのために、初めてのサウンド・インスタレーションであるカリーチェを創作。同作品は2007年タスカニー(イタリア)のPXフェスティバルおよびシティソニックのルクセンブルグ・エディションでも再現される。

デイヴィッド・フィン/照明デザイン

デイヴィッド・フィンは16歳の時、人形遣いバー・ティルストロムのプロダクションで、その最愛のキャラクター、ククラ、
フラン、オリーと共に照明デザイナーとしてのキャリアをスタートした。1988年「ジェローム・ロビンスのブロードウェイ」から照明デザイナーのジェニファー・ティプトンのアシスタントを5年間務める。ティプトンのアシスタントとしての主な仕事に、マイク・ニコルズ、ロバート・ウィルソン、アグネス・デ・ミルとの作品がある。「ジェローム・ロビンス」ではティプトンのデザインを再現、またトワイラ・サープのバレエの主要カンパニーのワールドツアーでは、サープのカンパニーの照明ディレクターとして、グランパ、セクステット、男性のダンス、オクテット等の照明デザインを手掛けた。1993年から2000年まで、ミハイル・バリシニコフのホワイト・オーク・ダンスプロジェクトの常任照明デザイナーを務め、マーサ・カニンガム、ハニャ・ホルム、ホセ・リモン、キャロル・アーミテージ、坂東玉三郎の作品の照明デザインを手掛ける。最初のバレエ作品は、1989年イギリスのバーミンガム・ロイヤル・バレエにおけるサー・ピーター・ライトの「くるみ割り人形」(ジョン・マクファーレン装置)で、同作品はスターダンサーズ・バレエにより東京でも上演された。ポール・テイラー、ジェイムズ・クデルカ、サーシャ・ワルツといった卓越した振付家の作品、またパリ・オペラ・バレエ、サンフランシスコ・バレエ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、リヨン・オペラ・バレエ等の一流カンパニーとの仕事も多く手掛ける。オペラでのキャリアは1997年、ブリュッセルのモネー劇場での「オセロ」に始まり、以降ザルツブルグ・フェスティバル、パリ・オペラ、ロイヤル・オペラ、アムステルダムのHet Musiektheater、
ニューヨーク・シティ・オペラ、サンフランシスコ・オペラ、ウィーン・フェスティバル等にも参加。2004年から2006年にかけて、デザイナーであり演出家のマイケル・レヴィンと演出家のフランソワ・ジラール、アトム・エゴヤン、ティム・オルバリーと共にカナディアン・オペラ・カンパニーの「ニーベルンゲンの指輪」の照明デザインを担当。このプロジェクトでのフランソワ・ジラールとのコラボレーションが、以降シルク・ド・ソレイユでの仕事に繋がる。
現在デザイナーとしては、デイヴィッドはルツェルン・シアター(スイス)のダンスオペラ「Les Larmes du Ciel」、「La Guerra d‘Amore」(ローザンヌ、サンフランシスコ、ブラウンシュワイク)、ザルツブルグ・フェスティバルでのダンス・シアター・ワーク「センツァ・フィーネ」「The Day I Go to the Body」等、革新的な総合芸術に携わることが多い。映像における照明デザインに、マーティン・スコセッシの「ジ・エイジ・オブ・イノセンス」の舞台シーンがある。
監督作品であるドキュメンタリー・フィルムの「The Green Monster」は、ニューヨーク・ミュージアム・オブ・テレビジョン・アンド・ラジオの1999年度最優秀ドキュメンタリー・フィルム十選に選出された。本作品にて第19回読売演劇大賞スタッフ賞受賞