詩・映画監督・絵画・舞台美術・評論・戯曲と多岐にわたりその芸術的才能を余すことなく発揮したフランスの天才、前衛マルチ・アーティスト ジャン・コクトー(1889−1963)が、1946年に書き上げ、また自らの手により映画化(1947年エドウィージュ・フイエール/ジャン・マレー)もした名作【双頭の鷲】。
 この作品は、『詩人の血』『オルフェ』『美女と野獣』などのコクトー作品に主演してきたジャン・マレーが、ジャン・コクトーに
「一幕は沈黙。二幕は饒舌。三幕は階段落ち」
の芝居を依頼したことにより出来上がりました。
『双頭の鷲』は、オーストリー・ハプスブルグ家最後の王妃エリザベートの刺殺事件(=1898年9月レマン湖のほとりでイタリア人アナーキストにより刺殺)など数奇なる実話を元に、コクトーが独創的に探求した傑作です。

コクトーの戯曲以外にも、シシィの愛称をもつエリザベートはその伝説的な美貌、旅から旅へと放浪に費やした生涯、封建的な宮廷に対し抵抗したデモクラティックな精神など、その魅力は『皇妃シシィ』『ルートヴィッヒ』『うたかたの恋』などの映画に描かれてきました。


19世紀ヨーロッパに君臨する王家を舞台に、
王妃失脚暗殺を企む皇太后一派の陰謀、
皇太后の情夫である警視総監フォエーン伯爵と
王妃に純愛をささげる反政府詩人スタニスラスとの死闘。
毒薬と剣によって炸裂する王妃と詩人、
<無政府主義精神を持つ王妃>と
<王党派精神を持つ無政府主義の詩人>

このふたりの命がけの恋の結末は・・・!?



<その女は、威厳の中にも飾り気の無い素直な性格。
また、優美と典雅、激情と勇気、高貴と端麗、 そして宿命への鋭い感覚を持ち合わせた王妃。>

美輪明宏は、歌舞伎・能・狂言の手法をあちらこちらにちりばめた演技で、限りなくはかない<死を賭けて貫く至高の愛>、宮廷・国家と対峙したその王妃の姿を描きます。
一見すると難解な戯曲であるにもかかわらずその卓越した理解力・読解力をもとにした演出で、ダイナミックで気品があり、分かりやすく説得力のあるエンタテイメントとして仕上がります。たった6人の俳優でしか演じていないにもかかわらず、舞台の向こうの数千・数万の民衆や騎兵隊、王宮を取り巻く人々を描き出します。
スタッフには、アカデミー賞最優秀デザイン賞受賞の世界的活躍が目覚しい世界的衣装デザイナー 
ワダエミが1999年、2007年に引き続き衣装デザインをします。
キャストは、王妃の相手役、暗殺を目論み侵入した若き革命詩人スタニスラス役に、『黒蜥蜴』では愛人の雨宮役、『椿姫』ではアルマン役、『愛の讃歌』では、エディット・ピアフを再起させた21歳年下の青年テオ・サラポを演じ好評を博している 
木村彰吾。繊細さと純真さとある種の狂気を併せ持ったスタニスラスを演じ、また見事な階段落ちで全国の観客を魅了した。
警視総監フォエーン伯爵には、品格と押し出しの強い風貌の
長谷川初範
王妃の読書係りエディット役には、美輪氏とは『椿姫』以来となる
夏樹陽子
フェリックス公爵には97年2007年上演でも好演している
柄沢次郎
王妃の従順な召使・口の利けないトニー役には、現役の総合格闘家の
大山峻護

美輪明宏の演出・主演の名舞台『双頭の鷲』。
熱い再演の期待にお応えして、同キャストで更に練り上げられた作品として上演いたします。
どうぞご期待ください!