サムシング・フォーっていうおまじないがありまして。サムシング・ブルー(何か青いもの)、とかサムシング・ボロー(借りたもの)とか、花嫁が結婚式の当日に4つの何か(サムシング)を身に着けていくと必ず幸せな生活が送れるっていう言い伝えです。「サムシング・スイート」ってのは、その中にはないんですけど、サムシング・フォーの意味や響きが好きで作った言葉です。

と言うのも、「甘いもの」ってのが、ちょっと宗教的と思えるくらい好きなところがありまして。チョコやケーキにも目がないんですが、食べ物だけじゃなくて、人間関係とか物の考え方とか、人生のあらゆるところで、「サムシング・スイート」が欲しかったりする。彩りだったり、遊びだったり、「サムシング・スイート」としかいいようがないけれど、それがないと何か大事なものが欠けていると思ってしまう。同じ傾向の人がいると気が合うし、「甘いものはいらん」と宣言している人とはどこかで相容れないところがある。これが自分の基本姿勢なんだとある時に気がつきました。

私は「リアルなもの」と思っていること以外作れないという、ある意味作家としては欠陥かもしれないんですが(笑)、そういう特徴があります。今まで脚本を書かせてもらってきて、自分がやってきたことは要するに「身近な設定でウソを書く」っていうことだと思います。寄り添って暮らしていくこととか、戻ってくることとか、自分が考えるところの「ホーム」についての物語を書いてきました。そこに自分が大事にしている「サムシング・スイート」があった。

今回はそこを客観的に書こうと思い、結果、お話としてはちょっと苦いものになりました。その方が求めているものが、はっきり見えてくるんじゃないかなと思って、そうしました。

ふたりの女ともだちが出てくるんですが、かなりの腐れ縁な関係です。たいして親しくない人にはやさしくなれるけど、ほんとに気を許してる関係だと、つい表現がきつくなったり、自分をさらけ出しすぎた結果、激しくぶつかったりします。女の人から見れば、普通の風景だと思うんですが、男の人から見ると結構エグク見えるかもしれない。そういう部分からか、女同士の友情は信用できないってよく言われますけど、女同士でもちゃんと向き合ってつきあってると、家族や恋人に対して持っている思いと同じような思いを奥底に抱いていたりするんです。友情という言葉ではちょっと言い表せないんですが、今回はそんな思いを抱きあっているふたりの女ともだちと、その恋人たちのビターな物語です。